高齢者問題

高齢者問題

我が国においては、世界でも稀に見るほどの高齢化が急速に進み、これに伴い、認知症患者や相続をめぐる争いの増加が顕著となってきております。
当事務所におきましては、相続争いの防止のための遺言書の作成、認知症となった場合に備えた事前の任意後見契約の作成、認知症により御家族等が申し立てる法定後見人選任の申立て、後見制度を補完するために信託を利用した家族信託の設定等、様々なリーガルサービスを提供しております。

1.遺言書の作成

遺言の方式には、(1)普通方式(2)特別方式があります。
普通方式での遺言は、①自筆遺言(遺言者がその全文、日付および氏名を自署し、これに印を押す形式)、②公正証書遺言(公証人に作成してもらう形式)、③秘密遺言(遺言者が証書に署名し、これを封入、封印し、公証人にこれを遺言として公証してもらう形式)の3種類があります。
特別方式の遺言には、①死亡危急時遺言(病気などで死亡が差し迫った状況下で、自筆遺言を作成する体力がなく、公証人などを呼ぶ余裕もない場合に利用される形式)、②難船時遺言(船舶遭難の場合において、船舶中にあって死亡の危急に迫った場合に利用される形式)、③隔絶地遺言(伝染病による交通遮断、在船中による陸地との交通遮断により公証人の関与を求めることができない場合に利用される形式)の3種類があります。
一般には、自筆遺言、公正証書遺言等の普通方式での遺言が作成されます。もっとも、普通方式の遺言でも、自筆遺言や秘密証書遺言は、以下に述べるようにそのデメリットも大きく、弁護士に遺言を依頼する場合には、公正証書遺言を作成するのが一般的です。




(1)自筆遺言
  この遺言は、遺言者がその全文、日付および氏名を自署し、これに印を押す形式です。遺言者単独で作成できるため費用面はかかりませんが、法律家の関与なくても作成できるため、内容が不明瞭であったり、方式上の要件違反を起こしやすく、また、管理者が定められていないため、遺言者の死後における偽造、変造や隠匿、破棄の恐れがあります。
 
(2)公正証書遺言
  この遺言は、①証人2名以上の立ち合いの下に、②遺言者が遺言の趣旨を口授します。③そして、公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、または閲覧させ、④遺言者及び証人が筆記の正確なことを承認後、各自これに署名し、押印します。⑤最後に、公証人が民法所定の方式に従って作成したものであることを付記し、これに署名・押印します。⑥なお、遺言書の原本は公証役場に保管されます。
この遺言は、秘密証書遺言と異なり、秘密が保持されず、自筆遺言と異なり、費用もかかりますが、偽造、変造の恐れはありません。もっとも、後で遺言能力(遺言内容を理解し、遺言の結果を弁識するに足りる意思能力)があったのか等が問題になる可能性はあります。
 
(3)秘密証書遺言
  この遺言は、①遺言者が証書に署名し、押印し、②遺言書を封入し①の押印に使用した印を以って封印します。③そして、遺言者が公証人1人及び証人2名以上の前に②の封筒を提出して、自己の遺言である旨、並びに、他人が書いた場合(この方式では署名だけ自署が要求される。)には、その筆者の氏名及び住所を申述し、④公証人がその証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すという流れで作成されます。
しかしながら、①の段階で法律家の関与がないために、遺言の内容が意味不明となる恐れが払拭できず、且つ、自署が要件ではないために、判断能力の低下している高齢者に、推定相続人が自己に有利な遺言を押し付けるリスクもあるため、これを廃止しようという論者すら存在します。

2.後見制度の利用

(1)任意後見
  本人に判断能力があるときに、受任者に対して、将来、精神上の障害により、事理を弁識する能力が不十分な状況になった場合における自己の生活、療養看護、財産の管理に関する事務の全部又は一部を委託し、委託に係る事務につき代理権を付与する契約を公正証書の形式によって締結します。
そして、本人の事理弁識能力が不十分になった段階で、本人、配偶者、4親等内の親族、任意後見受任者が家庭裁判所に任意後見人の選任を請求し、家庭裁判所がこれを選任すると任意後見契約の効力が発生し、受任者が後見人になる制度です。
また、本人は事理弁識能力が低下しているため、選任された任意後見人を監督できないため、後見人を監督する任意後見監督人が選任されます。
 
(2)成年後見
  任意後見とは異なり、本人の判断能力が低下した後の段階において、本人、配偶者、4親等内の親族、検察官、市町村長等が、家庭裁判所に対して申し立てる制度です。そして、その判断能力の程度に応じて、①後見類型、②保佐類型、③補助類型の3類型があり、家庭裁判所は、①及び②では、本人の意思を確認して、③においては、本人以外の申立ての場合に本人の同意を要件とすることによって、本人の意思を尊重しながら、①及び②では精神鑑定を行い、③では医師の診断結果を聞いて、成年後見の開始を決定します。
  ア.後見類型
  精神上の障害により、事理を弁識する能力を欠く常況にある者について、家庭裁判所は後見開始の審判をし、後見人を選任します。
被後見人は、日用品の購入などの日常生活に関する法律行為は単独でできますが、それ以外の法律行為については、成年後見人が代理し、且つ、被後見人の財産を管理し、被後見人の行った行為を取り消すことができます。
 
  イ.保佐類型
  精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者について、家庭裁判所が保佐開始の審判をし、保佐人を選任します。被保佐人が法定されている一定の重要な行為をするには、保佐人の同意が必要であり、被保佐人が保佐人の同意なくして行った法律行為について、保佐人は取り消すことができます。また、家庭裁判所は、本人の同意を得た上で、必要であれば、特定の法律行為につき保佐人に代理権の付与をすることも可能です。
 
  ウ.補助類型
  精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な者について、家庭裁判所が補助開始の審判をし、一定の行為につき、補助人の同意を要する旨の審判をなすことができます。また、必要であれば、保佐と同様に特定の法律行為に代理権の付与も可能です。

3.家族信託の利用

家族信託は、高齢者や障害者等の生活を支援する信託です。つまり、高齢者や障害者、年少者の財産を管理保全し、これらの者の生活や福祉を確保する目的で設定される後見的な財産管理の信託であり、後見制度を補完する役割を持っています。
例えば、任意後見契約を締結しておくと同時に、後見人が本人の財産を勝手に浪費する等を防止するために信託を設定したり、高齢の親が障害を持つ子のためにその生活を維持するために、その財産に信託を設定し将来の生活資金するということが可能となります。
なお、このような目的で設定される特定障害者扶養信託に関しては、一定の要件の下に、3000万円までが非課税限度額となり、贈与税がかかりません。
当事務所におきましては、信託会社と業務提携しているため、信託銀行に比して安価で、且つ、有効なスキームを提供することが可能です。



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